有機溶剤と消防法とは?有機溶剤と消防法の関係をわかりやすく解説!

消防法とは? 有機溶剤と消防法 わかりやすく
消防法と有機溶剤

皆さん、こんにちは!有機溶剤情報局のまっすーです。

本日のテーマは有機溶剤に関わる消防法についてです。

ほとんどの有機溶剤は消防法に該当しており、保管や取り扱いにおいて注意が必要になります。

保管の際は引火点について知ることが重要ですので、引火点がわからない方は以下を参照してください。

引火点とは? 有機溶剤と引火点 わかりやすく

まずは消防法とは何かについて見ていきましょう。

消防法とは?

消防法とは、火災を起こさない、火災が起きても迅速に対応できるように対策・対応が定められた法律です。

念のため、消防法に掛かれている定義の原文を載せておきます。

第一条 この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。

消防法 | e-Gov法令検索

引用元の消防法の原文を見て頂いてわかる通り、法令文章は書かれている文章量も多く、一般の人にとってはわかりにくい内容となっています。

全てを取り上げることは難しいため、ここでは有機溶剤に関わる消防法を中心に解説していきます。

まずは、化学品における消防法を理解するうえで重要な危険物について見ていきましょう。

消防法とは、火災を起こさない、起きても対応できるように対策や対応が定められた法律のこと。

消防法上の危険物

消防法では、火災が起こる危険性のある物質を危険物として定めており、物質の性質により6つに分類しています。

 類別 性質状態品名
第1類酸化性固体固体一 塩素酸塩類
二 過塩素酸塩類
三 無機過酸化物
四 亜塩素酸塩類
五 臭素酸塩類
六 硝酸塩類
七 よう素酸塩類
八 過マンガン酸塩類
九 重クロム酸塩類
十 その他のもので政令で定めるもの
十一 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの
第2類可燃性固体固体一 硫化りん
二 赤りん
三 硫黄
四 鉄粉
五 金属粉
六 マグネシウム
七 その他のもので政令で定めるもの
八 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの
九 引火性固体
第3類自然発火性物質及び禁水性物質固体または液体一 カリウム
二 ナトリウム
三 アルキルアルミニウム
四 アルキルリチウム
五 黄りん
六 アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く。)及びアルカリ土類金属
七 有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く。)
八 金属の水素化物
九 金属のりん化物
十 カルシウム又はアルミニウムの炭化物
十一 その他のもので政令で定めるもの
十二 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの
第4類引火性液体 液体一 特殊引火物
二 第一石油類
三 アルコール類
四 第二石油類
五 第三石油類
六 第四石油類
七 動植物油類
第5類自己反応性物質 固体または液体一 有機過酸化物
二 硝酸エステル類
三 ニトロ化合物
四 ニトロソ化合物
五 アゾ化合物
六 ジアゾ化合物
七 ヒドラジンの誘導体
八 ヒドロキシルアミン
九 ヒドロキシルアミン塩類
十 その他のもので政令で定めるもの
十一 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの
第6類酸化性液体液体一 過塩素酸
二 過酸化水素
三 硝酸
四 その他のもので政令で定めるもの
五 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの

危険物とは火災が起こる危険のある物質のこと。第1類から第6類まである。

有機溶剤と消防法区分と引火点

有機溶剤は消防法の分類のうち第4類に当たります。

消防法第4類は「引火性液体」の性質を持つものです。

ほとんどの有機溶剤は引火点を持つため、引火性のある液体です。

消防法第4類の引火性液体は引火点によってさらに以下のように分類されます。

  分類     引火点   該当する有機溶剤例
特殊引火物-20℃以下ジエチルエーテル
第1石油類21℃未満トルエン、アセトン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、市黒ヘキサン、MCH(メチル市黒ヘキサン)、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸エチル、酢酸ブチル
アルコール類11~23℃程度メタノール、エタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、NPA(ノルマルプロピルアルコール)
第2石油類21~70℃未満 キシレン、灯油(ケロシン)、ノルマルデカン、シクロヘキサノン(アノン)、PM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ブチルセロソルブ 
第3石油類70~200℃未満ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルカルビトール 、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)
第4石油類200~250℃未満潤滑油、切削油、プレス油等

有機溶剤としては、第1石油類~第3石油類のものをよく見かけます。

特に汎用溶剤であるトルエン、キシレン、アセトン、MEK、MIBK、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノールなどは第1石油類、第2石油類、アルコール類に該当しており、第3石油類の有機溶剤が少ないように思います。

有機溶剤は第類に該当し、引火点によって分類される。

消防法と指定数量

有機溶剤と消防法の関係を知る上で次に重要なのは「指定数量」です。

指定数量とは簡単に言うと、危険物を保管できる量のことです。

危険物の保管量は、その危険物の危険性により定められており、先ほどの表の分類ごとに決まっています。

分類引火点性質指定数量
特殊引火物-20℃以下50L
第1石油類21℃未満非水溶性200L
水溶性400L
アルコール類11~23℃程度400L
第2石油類21~70℃未満 非水溶性1000L
水溶性2000L
第3石油類70~200℃未満非水溶性2000L
水溶性4000L
第4石油類200~250℃未満6000L

表を見て頂くとわかる通り、第一石油類、第二石油類、第三石油類は非水溶性と水溶性で保管量が違っており、水溶性のものは非水溶性のものよりも2倍も保管できます。

指定数量とは、危険物を保管できる量のこと。第4類の区分(有機溶剤の引火点によって決まる)ごとに数量が決まっている。

指定数量の計算事例

指定数量の理解を深めるために、ここでは2つの事例を挙げてみます。

1つの有機溶剤を保管する場合と、2つ以上の有機溶剤を保管する場合を例に指定数量の計算を見ていきます。

※事例では有機溶剤を対象にしていますが、塗料やインクなど消防法第4類に該当している化学品は同様の考え方を使います。

1.1つの有機溶剤を保管する場合

例えば、アセトンを保管する場合を考えてみます。

アセトンは消防法区分で消防法第4類第1石油類水溶性です。

また、アセトンは一斗缶で保管しているとし、一斗缶の入り目を16Lとします。

指定数量いっぱいまで保管するとなると、

400(指定数量[L])÷16(一斗缶の容量[L])=25缶

25缶まで保管できることがわかります。

2.2つ以上の有機溶剤を保管する場合

次に、2つ以上の有機溶剤を保管する場合を考えます。

ここでは以下の3つの溶剤を保管していると想定します。

①アセトン… 消防法第4類第1石油類水溶性 (指定数量:400L)

②灯油(ケロシン)… 消防法第4類2石油類非水溶性 (指定数:1000L)

➂プロピレングリコール… 消防法第4類3石油類水溶性 (指定数量:4000L)

2つ以上の有機溶剤を保管する場合、保管している有機溶剤をそれぞれの指定数量の何倍持っているかを計算し、1という係数を超えないようにする必要があります。

例えば、アセトンの一斗缶(16L入り)を18缶、灯油の 一斗缶(18L入り)を10缶、プロピレングリコール のドラム缶(200L)を1ドラム保管するとします。

すると、計算式は以下のようになります。

(アセトン)16(一斗缶の容量)×18(缶)÷400(指定数量)=0.72

(灯油・ケロシン)16(一斗缶の容量)×10(缶)÷1000(指定数量)=0.16

(プロピレングリコール) 200(ドラム缶の容量)×1(本)÷4000(指定数量)=0.05

係数を合計して、0.72+0.16+0.05=0.93

合計の係数が1を超えていないので保管可能です。

2つ以上の危険物を保管する場合は、指定数量の合計の係数が1を超えなければ保管可能。

危険物の保管場所

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危険物の保管には危険物倉庫が必要です。

(市区町村の条例によっては指定数量の5分の1は少量危険物となり、危険物倉庫がなくても保管できます)

危険物倉庫はただの物置用の倉庫とは違い、倉庫に以下のような条件があります。(一例)

危険物倉庫(屋内貯蔵所の条件)
  • 危険物倉庫として独立した専用の建築物とすること。
  • 高さを6m未満、床面積を1000m2未満とすること。
  • 壁、柱、床及びはりを耐火構造とすること。
  • 屋内貯蔵所と表示した標識、防火に必要な事項を掲示した掲示板を設けること。
  • 貯蔵倉庫は、独立した専用の建築物とすること。
  • 屋根を金属板等の不燃材料で造り、軽量な不燃材料でふくこと。
  • 窓及び出入口には、防火設備を設ける。
  • 窓や出入口のガラスは網入ガラスとすること。
  • 床面に水が浸入し、浸透しない構造とすること。
  • 床に適当な傾斜を付け、貯留設備を設けること。
  • 作業に必要な採光、照明及び換気の設備を設けること。
  • 引火点が70℃未満の危険物を保管する場合、内部に滞留した蒸気を排出する設備を設けること。

屋内貯蔵所の条件について抜粋

総務省消防庁

危険物倉庫を新たに建てるのが大変そうだ、と思われる方は以下のような危険物倉庫がパッケージ化されたものを設置するとよいと思います。

※危険物倉庫の条件が全て揃った状態のものが販売されていますので、ゼロから危険物倉庫を作らなくても、それを事業所内に設置するだけで済みます。

パッケージ化された危険物倉庫

危険物の保管には危険物倉庫が必要であり、危険物倉庫には一定の条件がある。

消防法とは?(Youtube:有機溶剤情報局まっすーチャンネル)

このブログの内容はYoutubeの内容を元にして書かれています。

Youtubeの内容は消防法における有機溶剤の区分と消防法の指定数量について端的に解説しています。

本記事は有機溶剤に関わる全ての人に向けて書いていますが、Youtubeの内容は有機溶剤の営業向きで作られています。(より簡潔にしています)

興味がある方は動画を閲覧ください。