シンナーの種類と違い~ラッカーシンナーと薄め液の違い、強溶剤・弱溶剤系シンナーとは?~

シンナーの種類と違い~ラッカーシンナーと薄め液の違い、強溶剤・弱溶剤系シンナーとは?~

皆さん、こんにちは!有機溶剤情報局のまっすーです。

本日のテーマは「シンナーの種類と違い」についてです。

突然ですが、ラッカーシンナーと塗料用薄め液(ペイント薄め液、塗料用シンナーとも言う)の違いはわかりますか?

また、塗料を希釈する際によく言われる強溶剤系シンナーと弱溶剤系シンナーがどんなものか説明できますか?

今回の内容を読むことで、ラッカーシンナーと塗料用薄め液の違い、強溶剤と弱溶剤系シンナーの違いについて理解することができます。

その前にそもそもシンナーが何かわかっていない方は以下の記事から読むことをおすすめします。

シンナーとは?意外と知らないシンナーの基礎知識

シンナーの種類

シンナーは非常に多くの種類があります。

系統別に分けて、代表的なシンナーを挙げてもざっと以下のようなものが挙げられます。

よく見る代表的なシンナー
シンナー名シンナー名
ペイントうすめ液アクリルシンナー​
塗料用シンナー​エポキシシンナー
ラッカーシンナーウレタンシンナー​
洗浄用シンナー​カシューシンナー​
アクリルシンナー​再生シンナー​
メラミンシンナー​NTXシンナー​
静電用シンナー​エコシンナー​

シンナーは塗料に対して中身の配合を変えて希釈ができるようにしており、塗料に由来した名称が付けられています。

アクリル塗料用であればアクリルシンナー、ラッカー塗料であればラッカーシンナー、ウレタン塗料であればウレタンシンナーといった非常に単純な名前の付か方になっています。

これらのシンナーの違いを解説すると複雑かつかなりの時間を要するので、この記事では弱溶剤系と強溶剤系の違いについて説明していきます。

弱溶剤系と強溶剤系

弱溶剤系と強溶剤系というワードは塗料の系統分けで使われることがあります。

弱溶剤系塗料、強溶剤系塗料といった2種類にざっくりと分けられます。

弱溶剤、強溶剤が何を意味するかというと、溶剤の樹脂に対する溶解力が強いか弱いかです。

溶解力が弱い溶剤が使われているものを弱溶剤系、溶解力が強い溶剤が使われているものを強溶剤系と言います。

では、溶解力が強い溶剤、溶解力が弱い溶剤がどういうものなのかを具体的に見ていきましょう。

弱溶剤系と強溶剤系は樹脂を溶かす力の強さによって、弱い系統と強い系統に分けている。

弱溶剤系とは?

弱溶剤系とは樹脂溶解力が弱い溶剤を使用したもののことを言いますが、具体的にいうと塗料用シンナーのことを言います。

塗料用シンナーはペイントうすめ液、塗料用うすめ液、ペイントシンナーなどメーカーによって様々な名前が付いてますが、どれも成分は同じです。

主成分にはターペン(別名:ミネラルターペン、ミネラルスピリット、ソルベントナフサと様々ですが、全て同じです)が使用されており、この成分は樹脂を溶かす力が弱いです。

塗料を溶かすためのシンナーなのに樹脂を溶かす力が弱くていいのか、と疑問に思う方もいるかもしませんが、弱溶剤系塗料は強い樹脂溶解力を必要としないので問題ありません。

弱溶剤系のメリット

ここで弱溶剤系塗料・シンナーのメリットを見ていきます。

弱溶剤系のメリットは以下のようなものが考えられます。

弱溶剤系のメリット

①溶解力が低く、下地を侵しにくい。

②揮発性が低いため、臭気が比較的少ない。

➂強溶剤系に比べ、有害性が低い。

補足として、メリットを1つ1つ解説していきます。

①溶解力が低く、下地を侵しにくい。

1つ目は、弱溶剤系のシンナーは溶解力が低いため、下地を侵しにくいです。

溶解力が低いというのはデメリットに感じるかもしれませんが、塗装はいくつもの塗料を塗り重ねて、強固な塗膜を形成させることが一般的です。

弱溶剤系塗料は下地を侵しにくい。下地を侵さないために、弱溶剤を使用する。

塗り重ねる際に、上塗りする塗料が強溶剤系だと、下地の塗料まで溶かしてしまう可能性があります。(下地の塗料を溶かしたり、影響を与えてしまうことを「下地を侵す」という言い方をします。)

しかし、弱溶剤系塗料(弱溶剤系シンナーを使用する塗料)は溶解力が低いため、下地を侵すことなく、上塗りすることが可能です。

身近な塗装としては、歩道橋や橋梁の上塗り塗料としてフタル酸塗料という塗料が使われていることがあります。

フタル酸塗料は弱溶剤系塗料の一種で、希釈には弱溶剤系シンナーが使用されています。

②揮発性が低いため、臭気が比較的少ない。

弱溶剤系シンナーは灯油並みの乾燥性の溶剤を使用しているため、揮発性が低いです。

一方で、揮発性が低いということは溶剤が気体になりにくいということでもあります。

そのため強溶剤系のシンナーと比べると臭気が少ないという傾向があります。

灯油並みと言われると臭いが強い気もしますが、実際にはターペンと呼ばれる溶剤が使用されており、灯油よりは臭気が低いです。

臭気が低いと、塗装する際に周辺環境(住民)への配慮が可能だと言えます。

一昔前は、溶剤系塗料が主流だったため、臭気が少ない塗料を選定しようとすると必然的に弱溶剤系塗料が選ばられていましたが、最近では水系塗料のように主成分が水(一部に水溶性の溶剤が含まれていることもあります)のため、さらに臭気の少ない塗料が選ばれるようにもなってきています。

➂強溶剤系に比べ、有害性が低い。

弱溶剤系塗料に使用されるターペン(別名:ミネラルターペン、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ)はトルエンやキシレン、酢酸エチル、MEKなどの強溶剤系に使用される有機溶剤と比べると有害性が低いです。

実際にターペンの有害性は以下のようになっています。※SDSより抜粋

人健康有害性項目有害性区分
皮膚腐食性・刺激性区分2
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)区分3(麻酔作用)
区分3(気道刺激性)
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)区分2(肝臓、精巣)
吸引性呼吸器有害性区分1

区分は数字が小さいほど危険性が高いことを表します。

一見区分1や2が多いようにも見えますが、強溶剤系シンナーに使用されるトルエンやキシレンはこの比ではなく、もっと有害性が高いです。

有害性の高い有機溶剤は有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)という法律に該当しており、ターペンもこの有機則の第三種有機溶剤に該当しています。

しかし、トルエンやキシレンは第二種有機溶剤に該当しており、より有害性が高いことが認知されています。さらに有機則だけでなく、毒劇物取締法にも該当しています。

これらの法律についは別の記事で解説していますので、気になる方は参照して下さい。

有機則とは? 有機溶剤中毒予防規則とは?
毒物及び劇物取締法とは? 有機溶剤と毒劇法の関係

弱溶剤系のデメリット

弱溶剤系のデメリットはメリットを逆に解釈するとわかりやすいです。

デメリットとしては以下のようなことが考えられます。

・溶解力が低い→強固な樹脂を溶かせない→塗膜が弱い

・揮発性が低い→乾燥が遅い→作業性が悪い

また、次で見ていく強溶剤系塗料のメリットを有していないので、併せて知ることで理解がしやすいと思います。

弱溶剤系塗料の用途

弱溶剤系塗料の用途としては以下のようなものがあります。(あくまで一例です)

・外壁屋根塗装(最近は水性塗料が多いですが、臭気を気にする用途のため)

・橋梁などの鋼構造物(フタル酸塗料という弱溶剤系塗料が使用されます)

・樹脂製品への塗装(下地の樹脂を溶かさないようにするため)

弱溶剤系シンナーとは塗料用シンナーのことで、溶解力が弱いので、下地に影響を与えにくく、臭気が低いという特徴がある。

強溶剤系とは?

強溶剤系とは、弱溶剤系とは反対に、溶かす力が強い溶剤を含有したものです。

シンナーであれば強溶剤系シンナー、塗料であれば強溶剤系塗料というような言い方もされます。

強溶剤系シンナーには、例えばラッカーシンナーやウレタンシンナー、アクリルシンナーなどが該当します。

強溶剤系シンナーに使用される有機溶剤はたいてい決まっており、トルエン、キシレン、アセトン、MEK、MIBK、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが使用されています。

これらの成分は樹脂を溶かす力が非常に強いため、強溶剤という言い方をされています。

強溶剤系のメリット

ここからは先ほどと同様に強溶剤系塗料・シンナーのメリットについて見ていきます。

強溶剤系のメリットは以下のようなものが考えられます。

強溶剤系のメリット

①溶解力が高く、様々な樹脂塗料がある。

②乾燥が早く、塗膜がすぐ乾く。

①溶解力が高く、様々な樹脂塗料がある。

強溶剤系は樹脂を溶かす力が「強い」ことから、強溶剤と呼ばれています。

樹脂を溶かす力が強いということはそれだけ幅広い樹脂を塗料として使用できるようになるということです。

例えば、強溶剤系塗料には以下のような種類があります。

強溶剤系塗料の種類

・ラッカー系塗料

・アクリル系塗料

・ウレタン系塗料

・エポキシ系塗料

弱溶剤系塗料にはここまでの種類はありません。強溶剤ならではの溶解力で様々な種類の塗料が作れます。

また、溶解力が高いということを視覚的に理解するために実験をしてみました。

強溶剤系塗料を弱溶剤系シンナー、強溶剤系シンナーで溶かした場合の比較実験です。

明らかに弱溶剤系シンナーでは溶解力が足りず、塗料が溶けていないことがわかります。

左は強溶剤塗料を塗料用シンナーで溶かしたもの。(溶解力が足りず、塗料が溶けていません)
右は強溶剤塗料をラッカーシンナーで溶かしたもの。(しっかりと塗料が希釈できています)

②乾燥が早く、塗膜がすぐ乾く。

2つ目のメリットは、強溶剤系シンナーは乾燥の早いものが多く、塗膜がすぐ乾くので作業性が良いということです。

弱溶剤系はそもそも乾燥が遅いのに対し、強溶剤系は乾燥の早いタイプが多いため、塗装の作業時間が短くて済みます。(一部の強溶剤系シンナーは塗料用シンナーと同じく、第二石油類タイプのものもあり乾燥が遅いものもあります。)

強溶剤系のデメリット

続いて、強溶剤系のデメリットは臭気が強く、有害性が高いということです。

樹脂を溶かす力が強い有機溶剤は臭気が強い特徴があります。

さらに、乾燥性が早いということは揮発性が高いということでもありますので、臭いの強い溶剤が空気中に気化しやすいということでもあります。

ラッカー系塗料はDIYでもよく使われますが、臭いが強すぎて換気無しでは使用できないでしょう。(使用していると頭が痛くなったり、くらくらすると思います)

また、先ほど強溶剤系塗料・シンナーに使用される有機溶剤を紹介しましたが、有害性の強い有機溶剤を規制する各法規に該当しています。

強溶剤系の成分(有機溶剤)と該当法規

トルエン→有機溶剤中毒予防規則(有機則)、毒劇物取締法(劇物)

キシレン→有機溶剤中毒予防規則(有機則)、毒劇物取締法(劇物)

MEK→有機溶剤中毒予防規則(有機則)、毒劇物取締法(劇物)

MIBK→特定化学物質障害予防規則(特化則)、毒劇物取締法(劇物)

酢酸エチル→有機溶剤中毒予防規則(有機則)、毒劇物取締法(劇物)

酢酸ブチル→有機溶剤中毒予防規則(有機則)

上記の通り、有機則、特化則、毒劇法に該当しており、有害性が高いことがわかります。

強溶剤系塗料の用途

強溶剤系塗料の用途としては以下のようなものがあります。(あくまで一例です)

・屋上防水(ウレタン系塗料が使用されています。)

・DIY用塗料(強溶剤系塗料としてはラッカー系、アクリル系塗料が多いです。)

・工場の床(エポキシ系塗料が多く使用されています。)

強溶剤系塗料の用途

強溶剤系シンナーとは樹脂溶解力が強いため、幅広い樹脂塗料があり、乾燥性が早く、作業性がよいという特徴がある。

シンナーの種類と違い(Youtube:有機溶剤情報局まっすーチャンネル)

今回はよく言われる強溶剤系シンナーと弱溶剤系シンナーにフォーカスして解説しましたが、理解が深まったでしょうか?

私も業界に入ったばかりのころは、強溶剤と弱溶剤の違いが分かりませんでした。

また、強溶剤があるのに弱溶剤系が存在する意味が分かりませんでした。

この記事を通して、シンナーの種類の違いについて少しでも理解が深まれば幸いです。

今回のシンナーの種類と違いはyoutubeの内容を元に作成しています。

興味がある方は動画を閲覧ください。