皆さん、こんにちは!有機溶剤情報局のまっすーです。
本日のテーマは「RoHS(ローズ)指令」についてです。
有機溶剤の営業をしていると、様々な調査依頼に出くわすのですが、その中で頻繁に調査依頼が入るのが、RoHS(ローズ)に関しての該否調査です。
「この製品はRoHSに該当していますか?」
「RoHS指令非該当証明書をください」
といった感じで質問や依頼をされます。
今回の内容を読むことで、RoHSとは何なのか、有機溶剤とRoHSとの関係について理解することができます。
有機溶剤に関する基本的な内容は以下で解説しています。
もくじ ※クリックするとジャンプします。
RoHS指令とは?
RoHS指令の「RoHS」とは、Restriction of the Use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment Directiveの略語を表しています。
上記の英語を翻訳すると、RoHSは電気・電子機器類への、特定有害物質の使用制限を意味します。
ただし、RoHSは国内の規制ではなく、EU(ヨーロッパ連合)内の独自の規制です。
つまり、RoHSとは何かを正確に言うと以下となります。
RoHS指令 = EUへ電気・電子製品を輸出するとき、対象の有害物質の使用を制限する指令
電気機器と電子機器の違い
ここで電気機器と電子機器の違いについて、イメージで整理しておきましょう。
電気機器とは、電気を使う機器のことで身近なものでいうと家電やスマホのようなデバイスのようなものを指します。
一方、電子機器とは、電子の流れを制御する装置のことパソコンやスマホの中に組み込まれているようなものを指します。
RoHSの対象製品
実際にはRoHSには対象となる製品のカテゴリが決まっています。
以下の電気機器、電子機器類が規制の対象となっています。
製品カテゴリ | 具体例 |
---|---|
大型家庭用電気製品 | 冷蔵庫・洗濯機・エアコンなど |
小型家庭用電気製品 | 掃除機・時計・電動歯ブラシなど |
IT機器及び遠隔通信機器 | パソコン・複写機・携帯電話など |
民生用機器 | テレビ・ビデオカメラ・ハイファイオーディオ・アンプ・楽器など |
照明機器 | ランプ類・照明制御装置 |
電動工具 | 電気ドリル・ミシン・はんだ用具など |
玩具、レジャー、スポーツ機器 | ビデオゲーム・電気電子部品を含むスポーツ器具・スロットマシーンなど |
医療機器 | 医療機器 |
産業用を含む監視および制御機器 | 産業用の監視および制御機器 |
自動販売機 | 飲料自動販売機・食品自動販売機・現金自動引出機など |
上記カテゴリに入らないその他の電気電子機器 | 軍事用機器、宇宙用機器、産業用大型固定工具、大型固定据付機器、輸送機器、ソーラーパネルなどは除外 |
詳しく知りたい方は以下のサイトをお勧めします。
独立行政法人日本貿易振興機構
RoHSとは、 EUへ電気・電子製品を輸出するとき、対象の有害物質の使用を制限する指令のこと。
RoHS指令の概要
RoHS指令には、通称RoHS1(ローズワン)、RoHS2(ローズツー)と呼ばれるものがあります。
RoHSは指令が出された後に、改正されて対象物質が増えています。
最初に指定されたものをRoHS1、改正されて物質が増えたものをRoHS2と呼びます。
しかし、RoHS1、RoHS2を区別することはあまり多くありません。
大抵はRoHS全体のことを指して、非該当証明書などの発行依頼があります。
それでは実際にRoHS1、RoHS2の対象物質について見ていきましょう。
RoHS1の対象物質
RoHS指令が初めて出されたのは2006年です。
当初は以下の6物質を特定有害物質としていました。
これらの有害物質には最大許容濃度が設定されており、製品への含有がその濃度以下になるように制限がかけられています。
私自身、このような化学物質には詳しくはありませんが、過去に鉛中毒や水銀中毒の事故があったことは知っています。
例えば、日本でも以下のような事故が起きています。(興味がある方は詳細をリンク先で確認してください)
牛込柳町鉛中毒事件 ※Wikipediaへのリンク
1970年、東京都新宿区牛込柳町交差点付近に住む住民の血中から、高濃度の鉛が検出されたことで、自動車排気ガス汚染の深刻化が指摘された事件。日本が当時使用していた有鉛ガソリンに対する規制強化のきっかけとなった。
阿賀野川有機水銀中毒事件 ※Wikipediaへのリンク
昭和電工(現・レゾナック・ホールディングス)の廃液による水銀汚染の食物連鎖で起きた水銀中毒事件。熊本県で起きた水俣病に対し、第二水俣病とも呼ばれる。
RoHS2の対象物質
RoHS2により対象物質が追加されたのは2019年です。
既存の6物質に対し、新たに以下の4物質が追加されました。
•フタル酸ビス-2-エチルヘキシル
•フタル酸ジブチル
•フタル酸ブチルベンジル
•フタル酸ジイソブチル
この4物質の許容濃度は全て1000ppmです。
こちらは水銀中毒や鉛中毒のように大きな中毒事故は見られませんでしたが、上記の4物質には高い生殖毒性があり、シックハウス症候群の原因にもなります。
※シックハウス症候群はフタル酸エステルの他に、トルエンやキシレンなど建材に含まれる化学物質が原因となります。
RoHSにはRoHS1とRoHS2があり、合計で10個の有害物質が指定されている。
RoHS指令と有機溶剤の関係
有機溶剤や溶剤を含む洗浄剤・剥離剤などに対して、RoHSの調査書類を求められることがあるのですが、RoHSの10物質と有機溶剤に関係があるのか?ということについて見ていきます。
結論、RoHSと有機溶剤は関係ありません。
その理由を解説していきます。
RoHSの有害物質と有機溶剤はほぼ無関係
RoHSの有害物質は意図的に添加しない限り、混入することがありません。
ただし、例えばRoHS2のフタル酸ジブチルはDBPとも呼ばれ、可塑剤として有機溶剤の1種として取り扱われます。
この場合は、直接RoHS2に関係しますが、それ以外の場合は関係しないので、「ほぼ」無関係と言っています。
有機溶剤、シンナー、洗浄剤、剥離剤に対してRoHSの調査依頼がされた場合は、「意図的に添加していない=含有していない」ものとして調査に回答します。
RoHSの調査への回答
RoHSの調査への回答をする際は、「不使用証明書」や「非該当証明書」といった形式で回答をします。
一般的には、RoHSに「非該当」であることを証明するのは難しいため、「不使用証明書」として無関係であることを証明する書類で対応することの方が多いです。
その理由として、例えばシンナーや洗浄剤のような複数種類の有機溶剤の混合物があったとして、その原料1つ1つがRoHSに無関係であることを証明することが難しいためです。
また、シンナーや洗浄剤のメーカーは商品を数百、数千種類持っていることから、正確に非該当を証明することは不可能です。
一方、それぞれの原料の製造方法や製造工程が辿れなくても、溶剤を混合する工程を自社でやっているのであれば、製造過程で意図的に混入していないことは証明できます。
そのため、不使用証明書が提示されるケースが多いです。
RoHSと有機溶剤はほとんど関係がなく、通常は不使用証明書としてRoHSとの関係がないことを証明される。
RoHS指令とは?(Youtube:有機溶剤情報局まっすーチャンネル)
調査書類としてよく頂くRoHSですが、有機溶剤、溶剤系の洗浄剤・剥離剤はほぼ非該当ですので、関係ないということがお分かりいただけたのではないかと思います。
とはいえ、調査書類というものは「該当しているのを本当に調査しているもの」と「該当していない前提で証明として調査しているもの」があると思います。
RoHSの場合、「該当していない」前提で調査されるものですので、調査書類なんていらないのではないかと感じることもありますが、証明が念のため必要ということでしょう。
今回のRoHSと有機溶剤の関係はyoutubeの内容を元に作成しています。
興味がある方は動画を閲覧ください。
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