皆さん、こんにちは!有機溶剤情報局のまっすーです。
本日のテーマは「揮発油税とは?」についてです。
「揮発油税」は石油化学業界関係に勤める方であれば、関わることがあるのではないかと思いますが、揮発油税法が複雑すぎて内容が理解しにくいという特徴があります。
今回の内容を読むことで、揮発油税の適用対象となる「揮発油」の定義をはじめ、その分類について理解できるようになります。
ちなみに揮発油税は大きく分けて以下のように4つに分類できます。
これから解説する揮発油税の記事を読むことで以下の内容すべてを理解できるようになります。
今回は課税区分の1つ「本来の揮発油」についての記事となります。
課税区分 | 対象 | 規格 |
---|---|---|
本来の揮発油 | 炭化水素油 | 比重0.8017以下 |
法第6条の揮発油 | 揮発油+ 揮発油以外のもの | 揮発油に類似するもの |
租特法上の みなし揮発油 | 炭化水素油+ 揮発油以外のもの | 0.8017<比重≦0.8762 初留点100℃未満 |
特定石化製品 | BTX類 | 石油化学免税のBTX類 |
もくじ ※クリックするとジャンプします。
揮発油とは?
揮発油とは何でしょうか?まずは定義から考えてみましょう。
辞書で調べてみると、以下のようなことが書かれています。
この辞書の定義で、揮発油税の揮発油の意味を理解しようとすると間違えます。
揮発油は、揮発油税法という法律内で以下のように定義されています。
温度15度で比重が0.8017を超えない炭化水素油
この「超えない」という表現に注意してください。
「比重が0.8017を超えない」というのは、「比重が0.8017以下」を表します。
揮発油とは何か?
次に、揮発油という言葉が何を指すのかを具体的に考えてみましょう。
揮発油とは、「15度で比重が0.8017以下の炭化水素油」ですので、まずは炭化水素について考えてみます。
炭化水素類と聞くと、一般的には以下のような炭化水素をイメージするのではないでしょうか?
・炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、ヘキサンなど)
・加工油(切削油、研削油、プレス油、ねじ切り油など)
・燃料(ガソリン、軽油、灯油など)
・潤滑油
ここで注意いただきたいのは、揮発油の定義では炭化水素ではなく、炭化水素油が対象になっているということです。
炭化水素=炭化水素油と考えてしまうと、間違えてしまいます。
炭化水素油とは?
炭化水素とは、正しく言えば、炭素(C)と水素(H)で構成される化学物質です。
炭化水素油を簡単に理解するために、単一の炭化水素と比較してみます。
単一の炭化水素とは、1つの炭化水素系の化学物質のことです。
具体的に言うと、トルエンやキシレン、ヘキサンやヘプタンが単一の炭化水素に当たります。
単一の炭化水素は化学式で表すことができますので、以下のような構造式を書いて表すことができます。
一方、炭化水素油とは様々な炭化水素が混ざって液体となっています。
例えば、ガソリンや灯油、ナフサ、ゴム揮発油などが該当します。
ガソリンは、ガソリンという物質が存在している分けではなく、石油を分解していく過程で、ある温度帯で回収できるものをガソリンと名付けているだけです。
実際にガソリンには数十種類の炭化水素が混ざってできています。
色んな炭化水素が混ざった炭化水素油と呼ばれる液体の中で、15℃で比重が0.8017を超えない炭化水素油を揮発油と定義しています。
炭化水素系溶剤をまとめたページを別に用意していますので、参考にしてください。
揮発油とは、15℃で比重0.8017以下の炭化水素が混ざった液体(炭化水素油)のこと。
炭化水素をわかりやすく図式化
炭化水素をよりわかりやすく理解するために図式化しました。
まず、先ほどの説明のように炭化水素は単一のものと複数混ざったものに分かれます。
単一の炭化水素は、状態によって気体、液体、固体と分かれます。
それぞれ具体的な例は以下です。
気体:エチレン、プロピレン、プロパンなど
液体:トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなど
固体:ノルマルオクタデカンなど(聞きなれないものが多いです)
複数の炭化水素(炭化水素油)
単一の炭化水素が複数集まってできているものも気体、液体、固体と状態によって分かれます。
それぞれ具体的な例は以下です。
気体:石油ガスなど
液体:揮発油、揮発油以外など
固体:ろう、パラフィンなど
石油ガスは石油から分留したときに得られる気体の炭化水素です。
ロウとはロウソクの蝋(ろう)です。ロウも複数の炭化水素が合わさってできています。
ここで重要になるのが、液体の炭化水素の場合、揮発油と揮発油以外のものに分けられるということです。
揮発油:ガソリン、ナフサ、ベンジンなど
揮発油以外:一部の溶剤、軽油、重油など
揮発油は15℃で比重が0.8017以下の炭化水素油ですので、それ以外は揮発油以外として分類した方が理解しやすいため、2つに分けています。
揮発油はさらに3つにわけることができます。
揮発油をさらに分けて考える
揮発油は、「灯油規格のもの」、「灯油規格でないもの」、「みなし揮発油(揮発油類似品)」の3つに分けて考えることができます。
詳しくは別の記事で解説しますが、それぞれ具体的な例は以下です。
灯油規格のもの:灯油、一部のジェット燃料等
灯油規格でないもの:ガソリン、ナフサ、ベンジン、ゴム揮発油など
みなし揮発油(揮発油類似品):一部溶剤、代替ガソリンなど
ここまで説明してきたものを1つの図にまとめると以下となります。
揮発油税の揮発油を理解するためには、少なくともこの上の図が頭の中に入っていないと、情報をうまく整理することができません。
揮発油を初めて学ぶ方には、如何に困難なことかがお分かりいただけるのではないでしょうか。
揮発油の比重0.8017とは何か?
先ほどから揮発油の説明をする際に、「比重0.8017」を強調して言い続けてきましたが、そもそもなぜ小数点第四桁の細かい数字で表しているのでしょうか?
その答えは、揮発油と軽油を区別するためです。
揮発油と軽油は税金の種類が異なります。
軽油の場合、軽油引取税という揮発油税とは別の税金がかけられています。
また、揮発油税は国税となるのに対し、軽油引取税は県税のため、税金の納め先が違うという違いもあります。
軽油は比重で以下のように定義されています。
0.8017≦比重≦0.8762
つまり、比重0.8017を境に軽油の定義に変わり、税金の管轄が変わるため、このような細かい比重の定義で区別しているという訳です。
揮発油は、大きく分けて灯油規格のもの、灯油規格でないもの、みなし揮発油の3つに分けることができる。
なぜ揮発油税ができたのか?
続いて、揮発油税がなぜできたのか、歴史から考えてみましょう。
歴史から知ることで、より分かりやすくなるので、以下の画像を元に大まかに解説していきます。
揮発油税の歴史
揮発油税は1953年、道路特定財源として誕生しました。
急速にインフラとしての道路を拡大する中、自動車の利用者に道路の維持・整備費を負担させるために始まりました。
ガソリンに揮発油税として税金をかけておけば、走れば走る分だけ道路を利用したという見方もでき、公平な負担を強いることができます。
当時はガソリン税として、L(リッター)当たり28.7円の税金が掛かっていましたが、そこから度重なる増税があり、現在ではL(リッター)当たり53.8円の税金が掛かっています。
揮発油税開始当初からすると、ガソリン税としては揮発油税が1.8倍以上にもなっています。
ちなみにガソリン税は2009年4月に一般財源に変更されていますので、現在は道路の維持・整備の目的以外の用途に税金を使用することができるようになっています。
揮発油税とガソリン税の関係
ここで補足として、揮発油税とガソリン税の関係を見ていきましょう。
ガソリン税とは何でしょうか?揮発油税と何が違うのでしょうか?
実は、両者とも同じことを違う言い方をしているだけで、ガソリン税は揮発油税(国税)と地方揮発油税を併せた総称として使用されています。
よくガソリン税で問題になる二重課税とは、ガソリンに対して掛けられている揮発油税と地方揮発油税併せて53.8円/Lに対して、さらに10%の消費税が掛かってしまっており、税金に税金が上乗せされているということを言います。
揮発油税は国税なので国に納められるものであり、地方揮発油税は地方税なので都道府県・市区町村に納められるものであるという違いを抑えておきましょう。
揮発油税は、利用者に道路の維持・整備費を負担させるために始まり、時代とともに増税されてきた。
揮発油税とは?(Youtube:有機溶剤情報局まっすーチャンネル)
今回は揮発油とは何かについて理解いただけるよう徹底的に書きました。
揮発油は揮発油税法で定義されていますので、実際の法律を知りたい方は以下のリンクを参照してください。
e-Gov法令検索
次回の記事では実際に揮発油の対象となる品名と揮発油税が免税になる灯油免税について解説します。
今回を通して、押さえて頂きたいのは揮発油の定義です。
揮発油とは15℃で比重が0.8017以下の炭化水素油のことで、炭化水素油がどんなものを示すのかを理解いただけたら幸いです。
今回の揮発油税の基礎に関する記事はyoutubeの内容を元に作成しています。
興味がある方は動画を閲覧ください。
①原油を分別蒸留する際、低沸点で得られる油。
②沸点がセ氏30度から200度の範囲の揮発性の石油製品。